特急宇和海3号の光景

空港不動産株式会社  
代表取締役 鵜篭 貴之

 

6時49分、特急宇和海3号は、松山から宇和島に向けて出発する。
特急宇和海は通常3両編成であるが、5両編成・ほぼ満席。通勤時間帯でも普通に座れるお客様第一主義に徹している四国の鉄道会社にとって、収益のほとんどを産み出しているのはないかとさえ思ってしまう光景がそこにある。

昔ながらのディーゼル車。平坦な線路を通る快適な新幹線や電車に慣れてしまっていた自分にとっては、逆に新鮮である。山を越え八幡浜に向かう道中は、ジェットコースターさながらのドキドキ感がある(帰路の中山から伊予市までは、スリリングというよりむしろ恐怖である)。太陽がやっと顔を出しかけた卯之町近辺の霧のかかった田園風景、宇和島に近づくにつれ見えてくる宇和海は、筆舌尽くしがたい美しい光景である。

車窓から車内に目を向けてみる。観光客と思しき人もいないわけではないが、スーツを着た人が多く乗っている。日帰り出張や通勤での利用がほとんどのようである。藩を超え、山を超え、文化も生活圏も違うと考えていた私にとっては、驚きの光景である。宇和島までの乗車時間は80分。大阪ではちょっと長いかもしれないが、東京では普通の通勤時間であろう。

一時期郊外化が進んでいた大都市圏であるが、近年はどの都市でも集積化が進んでいる。理由は異なっているであろうが、ここ松山市も、他の愛媛県の都市、特に南予地方からの松山への都市の集積化の条件が整っていると感じる。集積化の過程では、人の移動と相まって、不動産の移動が生じる。高齢化に伴い、限界集落ののちに控えている限界都市の可能性をも考えれば、松山の不動産需要が増加する可能性を秘めている。その逆では、空き家問題も発生する。政策の実現や経済の流通を影でささえている不動産業界に期待されている役割は、非常に大きなものがあるように思える。

そんなことを考えていると終点の宇和島に到着した。改札を出てあびる朝日は、夜行性の私にとって、いつもより眩しく感じた。